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メダカ通信
 大里初等理科教育研究会  基調提案
                                            
                  「子どもとともに学ぶ環境教育」
                                                                                          
                                                平成10年6月12日(金) 
                                                熊谷市立大幡小学校 加藤 信

 みなさん、こんにちは。大里理科研のホームページにようこそ。本会は、昨年度ま
で、『究理会』という愛称で親しまれてきた、伝統のある会であります。本年度、心
機一転をはかり、イメージチェンジをかねて、名称を『大里理科研』としました。今
までの究理会は、ともすると、理科のエキスパートたちが集まり、指導案検討を中心
に、理論の空中戦ばかりの堅いイメージがあったと聞きます。決してそんなことはな
く、実技研修や現地研修もある、楽しいサークルであったのですが、時代の流れは速
く、たくさんの会員の方に参加していただくためにはどうしたらいいか、事務局を中
心に話し合った結果、先程述べたような改革をすることになったわけです。
 さて、前置きが長くなりましたが、今年度の活動の目玉として、会員による共同プ
ロジェクトを行うことを提案いたします。題して、「理科教師が考える総合的な学習」
ご存じのように、教育課程審議会の教育課程の基準の改善のねらいには、総合的な学
習の時間の創設がうたわれています。総合的な学習の時間についてに説明はここでは
省かせていただきますが、本会では、一つの切り口として、環境教育からアプローチ
できないものかと考えたわけです。環境教育の立場から、様々な授業実践や学級経営
などができないか試してみるのです。


(1)入口はメダカボトル

 話をより具体化していきましょう。ここに、いわゆるペットボトルがあります。こ
の中でメダカを飼ってみるのです。そんなことはもう実践されたという方があるでし
ょう。本会で提案したいのは、メダカをペットボトルで飼うことを通して、環境問題
について考える子どもを育てたいのです。単なる飼育として飼い、オス・メスの違い
や発生を教えたいのではありません。もちろん、それも入りますが、メダカから環境
問題に何が発信できるかを調べたいのです。本当にメダカにとって住み易い環境はど
んなものか考えさせ、工夫させたいのです。
 導入としては、先生方が、これから作る「ヒメダカの小さな世界」を提示するのが
よいでしょう。小さな世界とはどんなものかと申しますと、ペットボトルにふたがし
てあるのです。餌も与えなければ、水も取り替えません。子どもたちはそれを見て、
きっと「先生、メダカがかわいそうだよ」ということでしょう。それでも先生はがん
として受けつけず、何日か机の上に放置します。毎朝登校してくると、関心のある子
は、メダカは大丈夫かなと見に来ます。すると、いつになってもメダカは気持ちよさ
そうに泳いでいるのを見て、おかしいな、どうしてだろうと考え始めます。ペットボ
トルの中をよく見ると、水草がたくさん植えてあり、下には砂が敷いてあることに気
がつきます。なるほど、自然に近い状態にしてあるのかと気がついたらしめたもので
す。それでも、なぜ餌をやらず、ふたを閉めっぱなしで平気なのかはわかっていない
と思います。
 そこで、みんなも自分で飼ってみるかいと投げかけてみてください。子どもたちは
喜んで飛びついてくることでしょう。やりたい子にやらせるのがいいと思います。そ
んな中から、容器の大きさに対する適当な数がわかってくるかもしれません。水草は
どんな種類がいいのか何人かで比べることにより発見があることでしょう。砂の種類
や量、発生のメカニズムについて調べる子がいるかもしれません。子どもが自分なり
に飼う中で、問題を意識し、それについて考え調べ始めたとしたら、それはもう総合
的な学習の入口に立っているといえるのではないでしょうか。


(2)出口は1枚のレポート

 つまり、メダカやペットボトルは一つの道具であり、それらを使って何を学習させ
ることができるのかを我々教師が調べようというのです。先生がやる自由研究と言い
換えてもいいと思います。メダカから環境に何が発信できるのか、答えは見つかって
いません。今お集まりの先生方一人一人が見つけだせる可能性をもっているのです。
今の提案は、高学年向きで、低学年の担任の私にはできないと考えられた方がいるか
もしれません。そんなことはありません。発達段階に応じて、子どもがどんな反応を
示したかを記録するだけで、立派なデータになります。何年生では、こんな反応を示
した、何年生のこの教科のこの単元で授業に使えたというものもでも結構です。1年
間観察日記を付けるようになった子がいたという報告も聞いています。自然のシステ
ムやよさについて考えた子もいたようです。
 共同プロジェクトは、1年間といわず、2学期末を目安にしています。実践はまと
めが大切になってきます。一人一人の子どもにレポートを書かせて下さい。A4、1
枚で結構です。形式は自由。絵を中心にして図工的にまとめる子や社会の経験を生か
して新聞風にまとめる子、観察日記のように国語の力を生かしてまとめるものがあっ
ていいのです。三尻小の佐国先生が先行実践されていますので、レポートの例を後で
紹介してくれます。子どもたちが実践を通してどんなまとめをするのか今から楽しみ
です。また、先生方が一人の大人として実践された場合、先生がレポートを書いて出
して下さっても結構です。最後に、レポートを見比べて、よいものを冊子にまとめる
計画もあります。


(3)計画は子どもとともに広がりを大切に


 スタートはメダカボトルですが、実践を重ねていく中で、子どもたちの意識がどん
どん広がっていってかまわないと思います。入れ物をペットボトルから他のものに代
えたい、飼育するものをメダカから違う生物に代えてみたいという発想を妨げる必要
はないと思います。大きなテーマは総合的な学習であり、環境教育であるわけですか
ら。その変容も教師はしっかり記録しておけば、これも貴重なデータとなります。先
生があらかじめ考えていたものと、子どもが実際にどんな反応を示し高を図に表して
みて下さい。


(4)アンケート調査のお願い

 もう一つ大切なことは、この実践を通して、子どもたちにどんな変容があったかを
とらえることです。そのために、発達段階ごとに、自然に対する先行経験を調査して
おくことが必要になってきます。実践後に同じ調査を実施することにより、どんな項
目がアップしたかを調べることができます。
 事務局の方で、飼育に関する意識の調査を10問、環境に関する意識の調査を10
問SD法で調べられるように作成いたしました。低学年は3段階、中高学年は5段階
で、各項目について答えるようになっています。メダカボトルを提示する前に一度実
施し、データを取っておいて、実践終了後にもう一度同じ調査をしてください。
 きっと水が教えてくれます。水は語っています。さあ、みなさんでやってみましょ
う。みなさんで作り上げましょう。これが正解というものはありません。まだ誰もや
ったことがないのですから。答えのない研究こそ本当の研究といえるのではないでし
ょうか。実践し、報告したり、情報交換しながら模索していきましょう。大里初等理
科教育研究会では活動の一つとして共同プロジェクトを行うことになりました
2002年に導入が予定されている総合的な学習に向けての試みです。基調提案では本研
究会での総合的な学習に対する考え方を示します。ペットボトルでメダカを育てる共
同プロジェクトは学年や教科を超えて、新たな学習を創造できる素材として取り組ん
でいこうと思っています。
 教師と子どもがともに総合的な学習を進めていく試みをしていこうと思います。ご
多用のことと存じますが、校内の先生方お誘いあわせの上ご参加ください。

                         埼玉県大里初等理科教育研究会(おおさと理科研)
 

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