うる星やつら ’87

夢の仕掛人因幡君登場!ラムの未来はどうなるっちゃ!?

1987年(株)キティ・フィルム作品
監督:出崎 哲


うる星映画化第5弾の前のつなぎの作品

 完結篇の前、因幡君の話が今までないことから、つなぎの意味も含んだこの作品。でも因幡君のけなげさと、しのぶとの物語を十分に堪能できます。
 

ストーリー

 相変わらずまともな男に縁のないしのぶ。今日も
「まともな男の人、落ちてないかしら」
と、友引町を歩いていた。−と、若い男が道に倒れて
「食べ物を・・・」と言っている。「いい男」と思って人参をあげたまではよかったが、その男はウサギのぬいぐるみを着た異様ないでたちで、しかも、
「お礼にデートを」とつきまとって来る。「変態!」と叫んで、しのぶは男を突き飛ばした。男は空中でフッと消えてしまった。鍵を一つ落として・・・。

 所変わって、ここは異次元の野原。年に一度の大掃除のために、ウサギが集まっていた。先程の男、−因幡も、その仲間だったのだ。ところが彼は、”運命の鍵”を落としてしまったことに気が付いた。
「運命の鍵が一般人の手に渡ったら・・・」
と仲間が因幡を責めたてている頃、あたるの家ではラムが扉を造っていた。完成した扉に鍵を差し込んでみると、そこは暗黒の亜空間に無数の扉が浮いていた。あたる、ラム、しのぶの三人はその扉の一つを開けてみた。

 ここが異次元か・・・と思いきや、そこはいつもの友引町だった。あたるは、通りかかった女の子を追って走り出し、ラムもあたるを追って飛んでいってしまう。残ったのはしのぶ一人。彼女が見た物は、大人になった自分が子供を連れて歩いている光景であった。これは未来の世界であったのである。しかも成長した自分はあたるの母を「おかあさま」と呼んでいたのである。「あたしは将来あたるくんと・・・」。

 愕然としているしのぶの前に、またもや因幡が現れた。彼の名刺にはこう書いてある。「運命製造管理局・・・」。

 その頃、あたるたちの前でも悲惨な未来が容赦なく繰り広げられていた。あたるは若社長・面堂にこき使われ、ラムはレイと結婚していたのだ。呆然とする二人はしのぶ達と合流して空き地に座り込んだ。「こんな未来は認めない!」とイキをまく二人、「でも未来は変えられない・・・」と言うしのぶ。因幡はその三人に未来は他にもあることを告げた。

 次に彼らが訪れたのは運命製造管理局のロッカールーム。因幡はその制服を三人に渡す。これさえ着ていれば、時空移動は思いのまま。更に各扉ごとに別々の未来があると聞いて、「じゃあ、もっと明るい未来も・・・・」ヤジウマなあたるとラムは、別の未来を見に行くといいだした。

 そこは、一見何の変哲もない、いつもと同じ友引町だった。しかし、その未来は更に彼らを呆然とさせるものだった。しのぶはオールドミス、ラムは面堂と結婚し、あたるは面堂の小間使いに身を落としているのだ。更に別の未来を−と気を取り戻す三人に追い打ちをかけるように、彼らの前にはろくでもない未来ばかりが広がっていた。

 あきれかえった三人を因幡が案内したのは、囲炉裏のある小さな部屋だった。未来製造工場である。ここで好きな未来を詰めたノブを作って、それをドアにつければ、一つの未来ができあがると言うわけだ。「ハーレムを作る!」というあたる。「ダーリンと結婚」というラム。「どーしようかな」というしのぶ・・・三人は各々ノブを作った。その途端、運命製造管理局の連中が現れ四人は囚われの身となってしまった。

 ここはまたもや異次元の野原。運命製造管理局の面々が、あたる達の処分について会議をしていた。その結果、あたる達は処刑されることになったのだが四人は何とか窮地を脱出。四人は再び亜空間に帰ってノブを扉につけようとした。ところがそこに運命製造管理局の連中が現れ、因幡はドアに頭をぶつけて気絶、ラムは自分のノブを落としてしまう。その騒ぎの隙にあたるは自分のノブを扉につけて、こっそり未来世界に入っていった。

 その世界には、確かにハーレムがあった。しかしそれは六畳一間で、しかもラムのいないやはり悲惨な世界だった。落ち込んで亜空間に戻ったあたるの前に、怒り狂ったラムが立っていた。あたるのせいで結結婚できないのだという。あたるも
「本当に俺達は結婚できないのか」
と思い始めた。その途端、四人の前にまたもや運命製造管理局の連中が現れた。彼等は最後の手段を取るという。

「君たちの未来なんて、こうだ!!」
と、言い残して鉄の扉に大きな鍵を差し込んだ。すさまじい轟音が鳴り響く。それとともに亜空間に浮いている無数の扉が、次々と落ち始めていった。管理局の連中の笑い声が聞こえる。そして人類の未来が、あたる達の将来が、ものすごい勢いで落下し、二度と使い物にならなくなっていく・・・・・。
 

 


私から一言

 因幡君が堪能できる唯一の作品です。それだけに特殊な作品ですが、とっても面白いです。
 

声の出演


ラム>>>>平野 文
あたる>>>古川登志夫

面堂>>>>神谷 明
しのぶ>>>島津冴子
テン>>>>杉山佳寿子
サクラ>>>鷲尾真知子
錯乱坊>>>永井一郎
あたるの父>緒方賢一
あたるの母>佐久間なつみ
メガネ>>>千葉 繁
パーマ>>>村山 明
カクガリ>>野村信次
チビ>>>>二又一成
ラン>>>>小宮和枝
因幡>>>>鈴置洋孝

 他


スタッフ


キティ・フィルム作品

製作:多賀英典
企画:落合茂一
脚本:小出一巳/今泉俊昭
演出:冨永恒雄
美術監督:小板橋かよ子
作画監督:小林ゆかり
撮影監督:小山信夫
音響監督:なん波重冶
アニメプロデューサー:松崎義之/松下洋子
監督:出崎 哲

製作協力:マジックバス


参考資料:キャニオンLDより