(6)情報モラルを育てる「情報社会に参画する態度」 
 社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し,情報モラルの必要性や情報に対する責任について考え,望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度  ( 調査研究協力者会議「第1次報告」1997より)
 情報モラルを学び、よりよい情報社会を創っていこうとする豊かな心を育成する。
 
@情報化の進展による影の部分を克服する。
  情報社会に参画する態度は「情報化の影の部分を克服するための学習」と言える。
情報化の影の部分の例

・情報化社会は、コンピュータ等に依存した社会で、バーチャルな世界と現実の世界と の区別がつかなくなったり、人間が機械に使われるかのような状況になったりしてい ることがある。

・様々なメディアを通して得られる情報の中には,誤った情報や作為的に加工された
 情報も含まれている可能性がある。

・情報を信頼して判断し,行動したときに負うリスクや責任がある。
 (個人情報の漏洩、著作権・肖像権の侵害等)
 情報化社会 → 自己責任がより強調される今後の社会

・情報通信ネットワークを活用すれば,簡単に入手できるが、便利さと裏腹に,誤っ
 た情報が広がりやすい。
 以上のような点があることを、発達段階に応じてとらえ、対処していこうとする態度を 育成する。
 
 A学習範囲
  情報社会の創造に関与するという観点から、単なる情報の受け手としてだけではなく、 情報の発信者になる場合の態度の育成も重要視される。

  情報技術と生活や産業
  コンピュータに依存した社会の問題点
  情報モラル・マナー
  プライバシー
  著作権
  コンピュータ犯罪
  コンピュータセキュリティー
  マスメディアの社会への影響など
  ( 調査研究協力者会議「第一次報告」1997より)
 
 
 
 B学習指導の段階      









 

       影の部分の扱い       指導の仕方
主体的な学習
の段階



 初期の学習
の段階
影の部分を知らせ
対処法
を明示する

   

影の部分をできるだけ排除
    児童生徒の学習活動の中で、そうした
   場面が発生した時に、見過ごすことなく
   繰り返し指導する。
 
 
・情報の真偽に関わること
・著作権やプライバシーの問題等

 

   ( 調査研究協力者会議「第一次報告」1997より)
 
 C建設的な態度の育成にむけて
古藤氏(1999)は「新しい社会的技術(個々では情報技術)には、いつの時代も、光の部分(特質)と影の部分(負の影響)があるわけで、その知的理解に基づく鋭い洞察力が大切である。それが望ましい情報社会の積極面(創造)を考える力にもなるし、消極面(負の影響)を克服しようとする勇気を湧き立たせ、社会参加への意欲や態度の育成につながる。」といっている。(古藤泰弘「情報教育の実践化」『実践総合的な学習の時間』高階玲二編 図書文化1998)
 参画する態度の育成は社会の要請の強い内容であるので、情報手段に負のイメージを与えるのではなく、「便利だね、でも気を付けるところもあるよ」といったり「情報を発信するときは自分の責任がある」というように、情報化社会の仕組みを体験の中で、少しずつ理解させる。そうすることによって身の回りの情報に関する見方や考え方が変容してくるはずである。「これからどんな生活をしていけばいいのか」といった考えを持たせ、よりよい情報発信をしていく態度を養うことが大切である
 
 D実際の指導例

 ある小学校での例である。クラスのホームページを作成しているときに、事件は起こった。グループ単位で分担してページを作っていたところ、デジタルカメラで撮ってきた画像を、他の班が無断で利用していたのである。この件に関して、分かった時点でクラス内で話し合いを持った。「他人の写真を無断で使っていいかどうか?」ということに対して意見は2つに分かれた。
「便利だし、いい写真なんだからみんなで共有すべきだ」
「借りるなら一言言うべきだ」
意見交換の結果、「借りるときのルール」ということで、人のデータを使うときは一言声をかけるということで決着が付いた。


 これは著作権の問題である。インターネットを含めて、コピーの簡単なデジタルデータを扱っていると、教室内でもこのようなことが起きる。事例が発生したときに適切な指導することは、児童にわかりやすく、情報モラルを習得することになる。普段からこのような視点で、児童の活動を見つめることが参画する態度の育成には大切であろう。