(4)体験を通して習得する「情報活用の実践力」 
 課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力                (1997 調査研究協力者会議「第一次報告」より)
 「目的に応じてメディアを使い分ける力」と「情報を使った問題解決技能」を育成する。
 
 @情報活用の実践力とは
情報活用の実践力は、
・「どんなメディアをつかったら良いのか」という選択の技能。
・どんなところに情報があるのかという情報を探す(収集・判断)技能。
・結論を導いたり、決まりを見つけ出したりするために情報を処理する技能。
・適切に相手に伝えるため表現の技能や効果的に相手に見せる情報を創る技能。
・相手の状況(メディア特性)を考えて、メディアを選択したり、表現方法を工夫したりす る技能。
という一連の技能を、問題解決の場面で発揮する力であると考えられる。
   情報活用の実践力の育成にあたって教師は、積極的に問題解決的な学習活動を、取り入れことが大切である。児童がどんな場面で、どんなメディアをどう使って行ったらいいのかを身につけるために、情報を使って解決していく場を意図的に設定する。そして、十分な時間かけて、児童を試行錯誤させながら、時間をかけて育成していく力である。
 
 A段階的な指導
  情報活用の実践力の育成は児童一人  一人の技能やセンスをみがいていく学  習活動である。個人的な資質の要素が  強いために教科のように細かく学年に  応じたレベルを設けるのではなく、発  達段階をおおまかにとらえ、児童の実  態に応じて指導していく事が大切であ  る。協力者会議でも右のような段階的  な指導の方法を示している。
                      (協力者会議 第一次答申1997をもとにまとめたもの)
 B多様なメディア経験で養われる力
  情報教育ではコンピュータやインターネットを中心に扱う。しかし、コンピュータやイン ターネットは万能ではない。情報を探す経験をしていない小学校低学年の児童に、インターネ ットの検索機能を使わせても目的にあった情報を引き出すことはできない。いきなりコンピュ ータやインターネットを使うのではなく、段階的なメディアの経験も必要である。特に小学校 においてメディアを活用する時は、なんでもコンピュータやインターネットで解決するのでは なく、多様なメディアをそれぞれ比較しながら経験することが大切である。
  たとえば、インターネットで情報を探す力を育成するのであれば、図書館での資料探しや図 書検索の経験をすることが大切である。図書室などから、目的の書物を探す地道な経験を積ん でいる児童は、キーワードなどによる情報検索のしくみもわかりやすい。また、インターネッ トホームページなどによる情報発信する力を育成するのであれば、模造紙や新聞を使って発表 する活動で、見出しや色わけの工夫を学んだり、OHPやビデオなどを使って情報を整理して 提示する経験から、情報量や相手のことを考えたよりよいホームページ作成ができるものと考 える。たくさんのメディアによる問題解決の方法を身につけていれば、場面に応じた対処もで きるようになると考える。そのために、はじめは全員で同じメディアの有効性を経験する学習 活動を行う。次に、多様なメディアを経験をさせていく。そして、小学校高学年、中学校に至 る過程で、目的に応じて選択させるような場面を増やしていくような学習活動を展開していく ことで目的に応じたメディアの選択能力が身に付いていくのではないだろうか。
 
 C自己評価し、修正しながら学ぶ
永野和男氏は(1999)は「総合的な学習の時間に行われる情報活用の実践力の育成は、教科にたとえれば「体育」や「道徳」近いだろう。教師の1回の指導で子供に身に付くのではない。何回かの指導で、子どもの意識・視点が変わって、休み時間にうまくなるように練習したり、日ごろの身の回りに起きたことをより深く多様な視点で考えるようになったりして、徐々に身に付いていく。」と言っている
    (永野和男「総合的な学習の時間における情報教育のカリキュラムと評価の考え方」『NEW教育とコンピュータ』199912月号)
  情報活用の実践力は、課題設定からはじまる収集・判断・表現・処理・創造・発信・伝達と いった情報を使った解決の一連の手続きをきちんと踏んで成果を出す力である。特にネットワ ークでは発信する力が要求される。問題解決までの手続きをひとつひとつ頭で考えながらやる のではなく、関連を持ちながら、自然とその力を発揮できるようにすることを目指している。
  たとえ、自分流の解決法が見い出せたとしても、それがどんな場面でも使えるとは限らない。 子どもたちに状況に応じた多様な視点を持たせることも必要である。児童の意識や視点を変え るためには、自己の問題解決の方法を振り返る必要がある。つまり、自己評価である。できた こと、できなかったこと、うまくいったこと、いかなかったことをチェックし、次の解決に向 けて修正していく。情報活用の実践力は一連の手続きを何度も繰り返す中で少しずつ修正しな がら、模索していくことで育成されるべきであろう。さらに、これらは一人で行うのではなく、 先生や友達の調べ方やメディアの使い方を参考にしたり、共同作業の中で協力し合ったり、役 割分担をしたり、情報交換したりすることも大切な情報活用だと言うことを学ばせる必要がある。
 また、こうした一連のプロセスを支えるのは、学習課題である。単なるトレーニングや、メディアを使っただけの学習にならないように、魅力ある学習課題を考えていくことが大切である。
(参考文献 永野和男「総合的な学習の時間における情報教育のカリキュラムと評価の考え方」『NEW教育とコンピュータ』1999年12月号)