埼玉県立自然史博物館研究報告 第4号 (1986)
矢颪凝灰岩層および飯能礫層における新知見について
三友 清史
埼玉県立自然史博物館
町田 瑞男
埼玉県立自然史博物館
戸塚 敦子
熊谷市文化センター
まとめおよび考察
調査地域における筆者らの研究は,始まったばかりである.なお多くの疑問をいだきながら,かつ新たな疑問を生じながら論文化することは苦痛でもある.しかし,論文化する作業を開始して以来,問題点を把握しあるいは解決できた事実も多い.
特に,断層を中心とする地質構造はほとんど解決をみない.そのため,本報告では地質調査に基づく事実から推論される最小限の断層のみ記入するにとどめた.将来,調査を続行した後には多くの断層系が解明されるものと思われる.
以上の点を考慮して,まとめおよび考察をしてみると,
1.福田・高野(1951)の飯能礫層を矢嵐凝灰岩層と飯能礫層とに細分する.矢嵐凝灰岩層は竹越・他(1979)の飯能礫層下部に,また筆者らの飯能礫層は竹越・他の飯能礫層上部に相当する.
2.矢颪凝灰岩層は,基盤岩類とアバットして接する.また,層厚の変化が激しく0〜40mある.層厚は.飯能市街地西方の丘陵≧飯能丘陵≧阿須山丘陵≧その他である.
3.失颪凝灰岩層は,火山灰および軽石を主とし礫・砂・泥を伴なう.層厚の変化が激しいが,堆積速度も激しかったのではないだろうか? 長期間かけて堆積したものであれば,もっと多量の “normal sediment”が存在してもよいと思われる.
4.上位の飯能礫層とは堆積環境を急変させている.この変化は,矢颪凝灰岩層上限の侵食とともにダイアステムあるいは不整合なり考慮する必要が生じるかも知れない.
5.矢颪凝灰岩層は,予想以上に連続性に富み西側山地の基盤岩類との境界付近では,鍵層として役立つ.
6.飯能礫層は,西側山地の隆起に伴ない形成されていった扇状地性の河床礫である.下部から上部まで,同様の環境下に在ったものらしく,礫層中に著しい変化はない.
7.矢颪凝灰岩層および飯能礫層中の凝灰質なマトリックスから判断して,酸性火山灰を供給する火山の存在が推定される.また,軽石粒径などから,距離も現在の火山の位置くらいであろう.
8.飯能礫層も基盤岩類とアバットして接していることがある.阿須山丘陵の221m高地から南へ延びる尾根以東および青梅ゴルフ場などで観察される.
9.現河床礫と比較して,飯能礫層の方がむしろ小さいので,当時の河川も今日と大差のない河川勾配をしていたものであろう.
10.矢颪凝灰岩層は,珪藻化石類から考えて淡水であり,海水の影響を受けていない.
11.堆積物の成層状態が良好で,時には礫層を指交させていることおよび珪藻化石などから推定すると,内湾度の高い湖盆の西縁部に矢颪凝灰岩層は堆積した.ゆるやかな流れの中にも,時々流れの強い水流,恐らく湖盆に流入する河川の影響を受けたものと思われる.
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図4 地質図
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On the latest information from the Yaoroshi tuff
and the Hanno gravel
Kiyobumi MITOMO
Saitama Museum of Natural History, Nagatoro, chichibu-gun, 369-13 Japan.
Mizuo MACHIDA
Saitama Museum of Natural History,Nagatoro,Chichibu-gun,369-13 Japan.
&
Atsuko TOZUKA
Kumagaya City Cultural Center, Sakuragi. Kumagaya City, 360 Japan.
Abstract The studied area, occupies Hanno, Azuyama Hills and adjacent area, is situated on Hanno City, Saitama and Ome City, Tokyo.
A sequence of members found in the area is composed of the Yaoroshi tuff and overlying Hanno gravel of which ages are identified to be ranging from upper Pliocene to lower Pleistocene.
In this paper we describe the detailed geographical distribution of the two members and the species component of the fossil diatoms found in the Yaoroshi tuff. These diatoms are classified into 13 species belonging the five genera, Cymbella (3 spp), Gomphonema (1 sp), Nitzschia(1 sp). Pinnularia(7 spp), Stauroneis(1 sp). These are all fresh water and epiphytic species.
The sedimentary environment of the Yaoroshi tuff is inferred to be a boggy area containning still water from the silty deposits and the species component of fossil diatoms, and that of the Hanno gravel is inferred to be a alluvial fan from the gravelly deposits.