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おぴっぴ
下赤塚
おぴっぴは、評判の店だ。讃岐には、似たような店の名前の「ぴっぴ庵」という一般店がある。この「ぴっぴ」というのは、かわいい語感だが、実は讃岐地方の方言らしい。幼児語でうどんのことを「ぴっぴ」というそうである。これは、讃岐にうどんが、根付いていることの一つの証明になりうる。少なくとも関東地方では「ぴっぴ=うどん」は、一般的でない。わたしは、このぴっぴという言葉は気に入っている。
下赤塚の駅は生涯初めて降りた。うどん屋巡りをはじめてから、未知の街に降り立つ機会が増えた。この駅がある東武鉄道沿線は、私にとって、空白地帯だ。東京大仏は、このあたりらしい。駅からおりるとどことなく、くねくねした路地で下町っぽいが、モダンな感覚もある。店の場所は、駅から右に出ると、派出所がある少し広い通りがあるので、そこを左折し、2、3分歩く。あっけなく、見つかった。

店の外観には、旨い雰囲気が、充満していた。店の中には、4、5人の先客が、うどんを食べている。どうやら自転車で、食べにくるおじさん客が、多いようだ。地元に密着している証拠である。こじんまりしたスペース、テーブル席3つにカウンター7、8席がある。3人で切り盛りしていた。メニューを見た限りでは、釜上げに力を入れているらしい。定食系もある。暖かいうどんが、主流の店。冷たいざる系は、貧弱だった。今は、冬だからこういうメニュー構成になっているのだろうか。もし、夏だったら、少し違和感がある。うどんにこだわっているなら断然ざるだと思うが、あんまり出ないのだろうか。
とりあえず、かしわうどんを注文した。ねぎは細ねぎと太いねぎ両方入っている。これは、苦渋の選択だったのだろうが、けっこういい。太ネギのトロっとした感覚、これは、細いネギでは味わえない。細いネギが微妙に麺と絡み付く感覚、これは、太いネギにはない。存在が矛盾しているとは、思わなかった。かまぼこ2切れ。とり肉5切れくらい。汁は、関東に迎合してあるが、good!。それが熱い。食後、舌に熱さが残った。冬場に食べると身体の芯から暖まる。冬場のうどんはこうでなくては、いけない。麺と汁との境界面、これが、絶妙だ。体積にすれば、わずかなものでしかないだろうが、麺という文化と汁という文化が鳴門海峡の渦のように、対立し、交わりあっている。その渦の中心点は、瀬戸内海の深層にある伝説の竜宮城に続き、鯛や平目やスチュワーデス姿の木村佳乃が舞踊っている竜宮城の食卓には、きっと本場そのものの讃岐うどんが沈座しているに違いない。
2000.1.10
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