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ナイトトレイン

第4回の讃岐うどんツアーに旅立つことにした。毎年一回香川を訪れるのは、私にとって、もはや当然の話である。例によってサンライズ瀬戸号のノビノビ座席を利用することにした。私のコレクションのひとつ「ナイトトレイン」というジャズのアルバムは、お気に入りのCDであるが、夜行列車は、「旅」という感じがして、讃岐うどんツアーの雰囲気にぴったり来ると思う。
飛行機を使って香川まで移動するのはもったいないとさえ思う。場合によっては、飛行機代の方が安いので、お金がもったいないということではない。このワクワクしながら過ごす時間が短くなってしまうことが、もったいないのである。讃岐に行くまでの道のりで、これから出会ううどんを妄想し、帰りの道のりでうどんメモを整理する。讃岐までの行き帰りは、讃岐うどんツアーを構成する重要な部品のひとつでもある。また、夜行列車は、夜出発して、朝目覚めると香川に到着するから、着いてからの時間を有効に使えるという実利もある。讃岐うどんは、朝、午前中が勝負であるので、その時間帯をはずしてしまうのは、非常にロスが大きい。
昔、ドイツの古都ブレーメンからフランス花の都パリまで夜行列車に乗ったことがある。国境を抜けて走る電車の存在自体、日本国内で体験することはできないはずだが、東京から香川に向かうサンライズ瀬戸号には、少なからず異郷に旅立つその雰囲気があると思う。近くの席では、おやじ3人組が小さな酒宴を開き、がやがや騒いでいる。ノビノビ座席は、個室でないので、その騒がしさが若干気になるが、ブレーメンからパリに向かうその夜行列車の寝台個室でたまたま、白人の美少女と同室になってしまったときに比べれば、大して気になるほどではない。
最近、讃岐うどんは、完全にブレイクしたと考えて間違いない。極東方面に住んでいても、讃岐うどんは、すっかり日常的な存在になっている。私が香川に通いはじめたころには、今のような状況になるとは、夢にも思わなかった。当時夜行列車の目的地パリで知り合った日本人の自由旅行者に白人少女の美しさを1時間くらい切々と説かれ、共感せざるを得なかったことがあるが、讃岐うどんのすばらしさに共感する人が増えてうれしい反面、俺だけが知っている秘密の世界を盗まれてしまったようで残念に思うこともある。
今後の讃岐うどん界はどうなるだろうか。なるようになる。これが、正しい考え方の方向だと思う。日本でのうどんの歴史は深い。弘法大師の時代から続いているうどん文化がそう簡単に崩壊してしまうはずはない。今の讃岐うどんブームは、歴史の一場面でしかないであろう。次なる讃岐うどんの進化は必ずある。どこにあるのか、おそらく香川か東京にある。直感的な答えだが、異論をはさむ者は少ないであろう。電車の振動が心地よい。
平成15月10月9日
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