こくや(4)

(飯能市)

職人が通う店というと、どんなイメージをお持ちでしょうか。私がイメージする店は、何十年も外観が、変わらないような古ぼけた店で、店のありかが一般の人にはわかりづらい、仮に店だとわかっても、ドアを開けずらい、ドアをあける勇気があっても、中に入りづらい、中に入っても営業形態が不明、メニューもあるのかないのか、あいまい。値段は、安くも高くもない。そして、旨い。おばちゃんが、活躍している。そんなイメージをもっている。こういう店は、最初は居心地が悪いが、慣れると、これ以上のものは、ないと思えてしまう。そして、愛着もでてくる。

最近は、こういう店は、少なくなっている。ところが、極東チベットといわれている飯能市方面の一角にまだ、残っているのである。それが、このこくやである。 昼11時半頃、店に到着したが、最近近くにできた駐車場が満杯で少し離れたところに駐車して、歩いて向かった。店は、あいかわらず、盛況だった。もう、メニューをみるまでもないので、座席を確保するやいなや、肉汁うどんの大盛りを注文した。店の中は、職人系統の客が多い。静かな雰囲気だが、いやな静かさではない。くつろげる静かさである。こここくやの近所には、高校があって、この店の前が、駅からの通学路になっている。そのため、たまにジモティの女子高生や、OGと思われるグループが、うどんを食べていることが、ある。ところが、妙に違和感がない。職人であろうと、女子高生であろうと、そのまま、場に溶け込んでいくところに、こくやの奥深さがあると思う。

漫画本を読みながら待っていたのだが、なかなかうどんがこない。私の推測だが、どうやら、ある程度決まった時間にうどんをまとめて茹でるらしい。おそらく、時間帯にもよるが20分か、30分に1回くらいだと思う。ちょうど、12時10分くらいにうどんが、茹で終わったようだ。できれば、うどんを茹でる時間を調査しておいて、それにあわせて、店に入れば、すぐにうどんにありつけるみたいである。

いつものごとくのうどん。それでも、無性にここのうどんが、食べたくなるような魔力を秘めている。ここでうどんを食べていると、こくやの内の世界と、ドアを開けた外の世界のどちらが、日常で、どちらが、非日常なのか、わからなくなってしまう。こくやにおいては、日常と、非日常は、それぞれの先端において、メビウスの輪のようにつながっているのかもしれない。うどんを食べ終えて、肉汁にうどん湯を注ぎ込み、汁を飲み干して、店をでた。

2000.11.25

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