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加須うどんの作り方



 埼玉には、加須うどんという有名なうどん処が存在する。このホームページでも何軒か紹介しているが、全国的にもそこそこ有名である。今回、現役の加須うどん店主に指導を受ける機会をいただいた。讃岐うどんの世界には、及ばないかもしれないが、加須うどんの世界もプロのうどん打ちレベルでは、少なからず構造化されていることが、わかった。讃岐うどんとの比較の意味でもこの加須うどんの作り方を理解することは意義があると考えている。
 講師の話によると、加須でうどんが、広まった所以は、加須は、近くを荒川が流れ、たびたび氾濫したが、おかげで土壌が豊かで、昔からうどんに合う小麦がとれる土地柄だった。米は年貢でとられてしまうので、小麦をおいしく食べる方法が、民間に広まった。加須は、昔から交易で栄え、関東三大不動である不動様の参拝者も多かったので、うどんを客にふるまうようになった。これらが、理由だそうである。私個人的には、どうも後からくっつけたような理由に思えて仕方ないのだが、ま、実際のところは、誰もわからないのだろう。
 今回の教室では、讃岐うどんについて、ほとんど話がでなかったが、弘法大師が、中国からうどんを持ち帰って、そのころから香川で讃岐うどんというものが、食べられていたという説に異論を唱えていらっしゃった。どうも、今の形のうどんは、江戸時代からという認識らしい。今のところ年に2回、加須商工会主催でうどん教室を開いている。会費も300円と安いので、興味があったら、参加してみてください。

以下に加須うどんの作り方を箇条書きで説明する。基本的に標準的な家庭向けの作り方であるが、中にはプロレベルの技術にまで、及んでいるところもある。

(1)麺の作り方


 
中力粉   1kg
水   500g
塩    50g

塩水づくり
水500gに塩50gを溶かす。
塩水の温度は、常温。
夏は塩分を濃く、冬は薄くする。ボウメ度(夏=15、冬=10)
塩を入れる理由について、グルテンののびをよくする。うどんを水にいれても溶けないようにする。

攪拌
中力粉を入れたら、手で、大きく粉まわしをする。粉によっては、だまがあるので、それを除去する目的である。
水まわしは、最初70パーセントくらい加水し、あとは、少しずつ加えていく。
水が粉に均等に行き渡るように、指をたてて、早いスピードでかき混ぜる。大きな固まりができても、気にしない。
水分が、粉全体に行き渡ったら、簡単に練り込み(雑練り)ながら、まるめて団子にする。まとめ方は菊練りである。まとめたら、へその部分を下にする。(まとめる前の雑練りの段階で、生地にぬれた布巾をかぶせ、30分ほど寝かすと良い。)

足踏み
丸めた団子を足踏みする。足踏みをする目的は、うどんの腰をつくるためである。ビニールをかぶせ、生地が、まんまるの平になるようにくるくる回りながらまんべんなく足踏みする。踏む回数は、片足100歩、すなわち両足200歩である。次に生地を裏返して、また片足100歩(両足200歩)踏む。また、表に返して形を整える程度に踏む。踏み方は、あんまり力は入っていないようである。軽やかに踏んでいた。裏返しをするだけで、生地を折ったりはしない。この段階が終了すると、厚さ約1.5センチくらい、直径35センチくらいの真ん丸で平らな円盤状の生地になる。

寝かせ
生地をビニールにくるんで、空気にふれないようにし、3時間を目安に常温で寝かす。生地が熟成して、グルテンが形成され、表面がなめらかになる。

延ばし
角だしについては、特にこだわりは、ないようである。打つ人により違うそうだ。岡本屋の主人は、人間が丸いので、角だしはせずに丸くするそうである。(^_^;)
できるだけ手前に生地をおいた方が力が入る。腕の角度は、35度から40度がベスト。引っ張るのではなく、押しながら伸ばす。
真ん中の部分は、4回伸ばされることになるので、端のほうを意識してのばす。
細い麺棒の方が力が入る。平らにするには、太い麺棒を使う。
途中、生地を巻いたうどん棒を垂直にたてて、棒にそって、手を上下に動かして延ばす技法があった。
打ち粉については、生地が棒について、生地が破れないようにするにすることが、目的。できればあんまり使わない方がいい。プロの場合は、専用の打ち粉を使うが、家庭でつくる場合は、コーンスターチで良い。また、とも粉(友粉?)といってうどんの中力粉を打ち粉に使う方法もあるが、この場合には、よく粉を落としてから茹でること。
今回、延ばす大きさは、麺打ち台とほぼ同じ大きさ90m真四角くらいであった。厚さは、好みによるそうなので、太いうどんのときは、もっと小さいと思われる。
最終的に四角くするか、丸くするかも人によりけり。

切り
生地の折り方は「屏風だたみ」というもの、下の方が広く、折り返して上に行くにつれて、狭くなる。切り方は、包丁を前に押し出すようにして切る。切る幅は好みによる。今回はだいたい3mm程度であった。普段讃岐うどんを切り慣れている感触からすると、加水から想像できるとおり、柔らかすぎて、切りにくかった。
切った麺は、打ち粉を払って、小分けにまとめる。できたら、この段階で、麺棒につるし、2,3分間、日向干しをするとよい。
昔の加須うどんでは、この切った麺の長さを競っていたことが、あった。そういえば、加須うどんは、麺が異様に長い店が多い。

茹で
水10に対し、うどん1が理想。
茹でている間は、お湯の中で麺が上下に自動的に回転する状況がよい。
さし水は、しない方がいい。さし水は火力が強すぎるときに使うもので、家庭でつくる場合は、火力不足のことが、多い。
短時間で茹で上げた方がうまい。
茹ですぎると、うまみのでんぷんが逃げてしまい、おいしいところをお湯が食べて、残りを人間が食べることになる。
茹で時間は、7分が一応の目安だが、実際は、状況により変わる。
茹でるのと煮るのでは、味が違ってしまう。
鍋が小さいときは、麺を少なくして茹でる。
麺が透明になってきたら、茹であがり。

水洗い、盛り付け
うどん屋では、もりうどんが、一番ごまかしが利かない。
1人前200gが、目安。


(2)汁の作り方


かえしの材料
醤油、みりん、砂糖を一斗一升一貫目の割合で用意する。
醤油 一斗=18リットル
みりん 一升=1.8リットル
砂糖 一貫目=4kg

本がえし
材料を火にかけ沸騰寸前に火を止める。
土瓶にいれて、保存する。
3,4日たってから使う。

生がえし
材料をそのまま火にかけずに保存する。13日、14日経ってから使う。

だし
だしについては、本かつお、さばぶし、そうだぶし、昆布を材料とする。

だしとかえしの割合
つけ汁 だし4:かえし1
かけ汁 だし8:かえし1
ひやかけ だし6:かえし1

と、まあ、こんなところである。言葉の端々から加須うどん独自の世界が確かに存在することが、感じ取れると思う。讃岐うどんの作り方と似ているところもあるし、違うところも多い。香川と加須の民俗学的な違いが、現れているようで興味深い。讃岐うどんとの大きな違いは、塩分濃度、加水率と、足踏みのとき、生地を折りたたまないことで、この差違が、個性となるのだろう。小麦粉(1000g)に対する塩分の量が、実は、加須うどん(標準50g)の方が讃岐うどん(標準40g)より濃いのは、意外だった。

本稿が、加須うどん、讃岐うどんそれぞれの世界を解読する一助となれたら幸せである。(^_^)


 2001.2.19


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