イーハトーボ(17)
(寄居町)
快晴の日、だけど、寒い日だった。空気が乾燥している。こんな日は、うまい讃岐うどんを食べに行こう。まずは、予約だ。イーハトーボに電話を入れた。最近PHSを乗り換えたのだが、一番最初に登録した電話番号は、イーハトーボの電話番号だった。運よく、予約がとれたので、イーハトーボに向かう。今日は何を食ってやろうか。いつものごとく、そんなことを考えながら、国道を飛ばした。
やがて、怪しい看板を目安に細い道に入り、少し、行くと、見なれたうどん屋の風景が、目に入る。駐車場にとまっている車は、見覚えがある。例のごとく、うどん聖人いな@埼玉さんの車だ。あー、しまった。捕獲されて、うどん屋5軒つれまわされてしまう。だが、仕方ない予約時間になったので、入店を決意した。いつの間にか、のれんが、黄色くなっていた。うーん、建物全体の色彩感覚は、よく、わからないが、白いのれんよりは、いい感じだ。ドアをあけると、予想通り、いつもの指定席にいな@埼玉さんが、座っていた。ドアをあけると、同時に彼は、ふりかえって、にこっとされた。今日は、いつもにも増してうれしそうな雰囲気がただよっている。これだけ、御機嫌なら、捕獲してうどん屋をつれまわす可能性も低いに違いない。相席して、御機嫌うかがいすることにした。
まずは、ひやひやと、たぬきうどんのあつあつを注文する。彼に聞くと、今日は、3軒目だそうである、イーハトーボで5杯、その前の2軒で4杯食べて、お腹いっぱいなので、あと1杯でやめておくという。私の希望としては、10杯食べる前に、例えば3杯くらいで、満腹なことに気付いて欲しい思っている。やがて、彼の前にシンプルなうどんが、届いた。さすが、うどん通だけあって、いろんな角度から、うどんを眺め、箸でうどんの弾力を確認して、一筋の麺をとりだして、揺らしてみたり、ひっぱってみたりしている。ひっぱって、切れた瞬間にうんうんうんと3回うなずいて、ようやく食べ始めた。
聞くところによると、このうどんは、特製で、緑水晶で打ってもらったらしい。イーハトーボといえば、違う銘柄のうどん粉を使っているはずだが、いなさんが、緑水晶を持ち込んで、これで、うどんを打ってほしいと、お願いしたらしい。極東最高峰レベルの技術で、緑水晶を打つ、いきなり、すごい展開になってしまったが、イーハトーボの緑水晶うどんを食べたら、ひ孫の代まで、語り継がれるに違いない。極東うどんの讃岐うどん通の中には、この話を聞いて、悔しくて、眠れない人もでてくるに違いない。
というわけで、貴重な緑水晶うどんをおすそわけいただいた。うどんの細い、太いは、味にも影響がある。冷たいうどんは、細い方がうまい、と店の人は話していた。いつも食べるイーハトーボのうどんとは、全然違って、とても、同じ作者だとは、信じられない。やっぱり、粉の違いは、大きいのである。素人が打っても、粉により出来上がりに違いがあるが、うどん打の達人が打つと、その違いが、よりはっきりしてくる。緑水晶の特徴がよくでている。彼は、もう、感激してしまって、ぼう然自失状態でうどんを食べていた。生しょうゆを入れるのも忘れて、と思ったら、うどんそのものを味わいたいから、あえて、生しょうゆや薬味はいれなかったそうである。帰りぎわに第4回極東チベットツアーの開催を要請された。よし、やりましょう。やがて、彼は、出汁のしみこんだ割り箸をちゅぱちゅぱしながら、次のうどん屋に向かわれた。
私のひやひやうどんが、届いた。これは、いつものうどんである。寒いときでも、冷たいうどんは、うまい。少し遅れて、たぬきうどんのあつあつが、届いた。おいしかった。新しいアルバイトが不馴れだが、がんばって、一人前になってほしい。満足して、お代を支払い家路に向かった。

2001.12.8