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ふる川

(桐生)

 毎年の習慣で佐野方面に行くことにした。せっかくだから、桐生うどんを食べてから、佐野方面に向かうことにしよう。めざすは、ふる川といううどん屋である。巾広のひもかわうどんというのが、名物だそうである。桐生駅前のホテルの一階にめざす、うどん屋を発見した。うどん屋にしては、ゴージャスな雰囲気で、ちょっとした料亭のようである。

 店に入り、窓際の席に座る。立派なテーブル席の他に座敷の席がある。ひもかわうどんが、メインメニューになっていると思って、メニューを開いても、すぐに見あたらない。真ん中から少しそれた目立たないところにひっそりとひもかわうどんとあるだけである。ともかく、せっかくなので、ひもかわうどんを注文することにした。

 私の不勉強で、ひもかわというタイプのうどんは、最近まで知らなかった。ちょっと調べた限りでは、巾の広いうどんであるきしめんの関東地方での呼び名が、ひもかわというもの、きしめんは、誰もが知っている有名なものである。ひもかわは、それほど一般的ではないと思う。昔、名古屋で何杯か本場のきしめんを食べたことがあるが、そのきしめんをイメージしていた。何で、関東平野のはずれの地にきしめん類似の食文化があるのか、それを思索するきっかけが、掴めれば、今日の遠征は、それでいいと思っていた。

 店が混んでいるからか、割とうどんが来るまで、時間がかかった。その間、メニューにあったチャンジュという料理を注文する。どういうものか、わからなかったが、後で調べたら、韓国料理の一種で、たらの胃袋を塩漬けにしたものらしい。酒に合いそうだ。なぜ桐生のうどん屋で、韓国料理の中でもディープ位置付けにあるチャンジュを、普通に注文して、普通に食べることができるのか、韓国文化とうどんの関係には、やはり、私の主観内のみならず、それを超えたところにも、特別な関係があることを疑わざるを得ない。

 

な、なんじゃー、こりゃ。今は故人となった有名な俳優のものまねではない。幅広いことは知っていたが、ここまで広いとは思っていなかった。目検討で5センチくらいの巾がある。口の小さなおしとやかな女性が原型を保ったまま口の中にうどんを運ぶのは、不可能に違いない。そして、絶妙な薄さ。はかったわけではないが、1mmちょっとだろうか、ひらひらして、ちょっとすけそうな感じがするけど、しっとりして、正式名称は、忘れたが、ゲゲゲの鬼太郎に出演している妖怪のようなしなやかさと強さを持つ。

 ひもかわうどんは、きしめんとは、明らかに違う。汁にしょうがとネギを入れて、いただくことにする。汁に絡んだひもかわを舌に絡ませながら、食べる感覚は、快感である。私がこれまで食べたうどんには、なかった感触だ。それが、咽を通り抜ける愉悦の瞬間を味わう。汁もよくできている。癖になってしまいそうだ。今回は、ざるのひもかわだったが、これが、かけ系の暖かいひもかわだったら、また、印象が変わるかもしれない。これだけ均等に絶妙な薄さに仕上げるのは、技術的には、相当難しいと思われる。たくさん注文されても、困るだろう。それゆえにあえて、目立たないメニューになっているのかもしれない。うどんの奥深さを改めて認識しなおしたステルスであった。

 

 

平成14年1月6日

 


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